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映画【ネタバレ有】『きっと、うまくいく』まとめ・考察

映画

基本情報


(C)Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved
公開年:2009年
上映時間:170分
ジャンル: コメディ/ドラマ
監督/脚本:ラージクマール・ヒラーニ
主演:アーミル・カーン(ランチョー役)
  :R・マーダヴァン(ファルハーン役)
  :シャルマン・ジョシ(ラージュー役)

ハンター田中は「きっと、うまくいく」を視聴するまで、インド映画は劇中で唐突に歌って踊る、難解なジャンルと考えて避けてきました。ただ、本作の視聴後は、いかに自身が食わず嫌いを行っていたか痛感しました。
興味を惹くオープニング、カースト制度や文化の違い、音楽とダンスの親和性など、新しい発見に満ち溢れる、魅力的な作品でした。そんな本作の考察を発信して参ります。

あらすじ

『きっと、うまくいく』は、インド屈指の難関工科大学、ICEで出会った3人の学生、ランチョー、ファルハーン、ラージューを中心に展開する友情と人生の物語です。ランチョーは常識にとらわれない型破りな天才で、教育システムに疑問を抱きつつも、自由で創造的な生き方をしています。一方で、ファルハーンとラージューはそれぞれ家族の期待や経済的プレッシャーに苦しんでいます。

彼らの大学生活は、厳格な学長、ヴィールー・サハスラブッデーが支配する校内で過酷な学力争いに晒され続けます。ただ勉強が出来るだけではない天才ランチョーの独特な生き様が、スクールライフを通し、友人たちの人生を大きく変えていきます。そして、ランチョーはある日突然姿を消しました。

物語は、大学卒業後にランチョーを探しに行く現在パートと、学生時代の過去パートが交錯する形で進み、天才ランチョーの正体、目的が次第に明らかになります。


エピソードに対する考察

■なぜ鉛筆を使わないのか?

ヴィールー学長が新入生向けの演説で「宇宙飛行士のペン」の話をしました。
「宇宙飛行士のペン」は無重力空間でもインクが使え、多額のコスト掛けて作られたペンです。
ヴィールー学長は前学長から優秀さを認められて、受け継いだペンだったので、新入生は次に「宇宙飛行士のペン」を受け継ぐのは自分たちであると胸を躍らせました。それに対し、ランチョーは「宇宙でペンが使えないなら、なぜ鉛筆を使わないのですか?」と学長を黙らせてしまいます。

新入生は全員が学力に自信があり、難関工科大学に入学するほど優秀です。
優秀な学生たちがペンの凄さや、学長の演説に魅了される中でランチョーだけは全く異なる視点を持ち、コストと実用性という解を導き出します。
このシーンはランチョーがただ勉強が出来るだけではなく、起点が効き、カリスマ性を持つ人物と視聴者に印象付ける内容でした。

ジョイ・ロボの自殺

ジョイ・ロボは優秀な学生でありながら、彼の家族や学校からの過度なプレッシャーに押しつぶされていくキャラクターです。彼は卒業制作で高画質カメラ付きドローンの開発に挑戦しますが、期限以内に開発が出来ずに学長ヴィールーに「ガラクタ」と言われて、留年を断言されます。彼にとっては学業の成功が家族の期待に応える唯一の方法であり、それができない自分に対して絶望感を抱き、首つり自殺を行いました。

インド社会ではカースト制度や学歴競争が大きな社会問題になっています。
生まれた家で将来の職業が決まる彼らが、富を手に入れるためには従来のカースト制度に縛られない、ICT産業に行く必要があります。ただ、ICT産業に進めるのは学歴が優秀なごく一部の人間に限られます。そのため、学生は常に失敗の許されない過剰なプレッシャーに晒されて、ジョイのような最期を迎える人間は後を絶ちません。

■「All is well(アール・イーズ・ウェール)」

ランチョーの口癖で劇中、印象的な歌とダンスがある、「All izz well(アール・イーズ・ウェール)」は翻訳で「うまーくいーく」と表現されます。
ランチョー曰く、「All izz well」という言葉は、むかし村の夜回りが巡回中に警告として大声で発する言葉でした。ある日いつものように夜回りが、この言葉を発していたところ盗みに入った泥棒が驚いて逃げた、という逸話が映画の中で話されます。

しかし、逸話には続きがありました。
実は村の夜回りはトリ目で、何も見えない中、毎日「All izz well」と警告していたのです。
ランチョーはこの逸話から、「心はとても臆病で、マヒさせる必要がある」ということ。

私たちは常に何かに怯え、考え、悩むことがあります。将来の不安、人間関係、周囲からの目や期待など、常に何かに悩みを抱えています。
「All is well(アール・イーズ・ウェール)」はそんな人々の悩みを力技ではありますが、ポジションな気持ちにして心を軽くし、希望に満ちた言葉です。


作品の小話

英語版とのタイトルの違い

本作は英語版タイトルで『3 idiots』と記載されます。「idiot」とはバカや間抜けという意味で「3 idiots」で3バカという意味になります。大学で事件を起こすランチョー、ファルハーン、ラージューの3名を指すタイトルになってます。

日本の試写会では邦題が「3バカに乾杯」でしたが、全国公開を機に現在の「きっと、うまくいく」にタイトルが変更となりました。

当時のキャストの年齢

ランチョー役で大学生を演じたのは、主演アーミル・カーンでしたが、実年齢は当時44歳と驚異の役作りで話題になりました。キャスティング段階では、若い俳優を選ぶ予定でしたが、カーンは「是非やりたい。やらせてくれるなら若く見えるように体を絞る」と言いました。その結果、撮影期間中は肌艶を良くするために水を1日4リットル飲んだと後に語りました。
また、R・マドハヴァンは当時39歳、シャルマン・ジョシで30歳でした。

まとめ

『きっとうまくいく』は、教育システムの在り方や人生の成功とは何かを問いかける、ユーモアと感動に満ちた作品です。友情、家族、社会的なプレッシャーという普遍的なテーマを扱いながら、ランチョーの自由で型破りな生き方が観客に強烈な印象を与えます。

笑いあり涙ありの展開を通じて、「自分を信じて進めばきっとうまくいく」という前向きなメッセージが心に響き、人生のヒントを与えてくれる映画です。

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