基本情報
原題:Love and Other Drugs
公開年:2010年
上映時間:112分
ジャンル: ロマンス/コメディ
監督:エドワード・ズウィック
脚本:エドワード・ズウィック、チャールズ・ランドルフ、マーシャル・ハースコビッツ
主演:ジェイク・ギレンホール(ジェイミー・ランドール役)
:アン・ハサウェイ(マギー・マードック役)
アン・ハサウェイの熱烈なファンである私は、深く考えることなく、自然な流れで『ラブ&ドラッグ』を視聴してました。詳しい内容を知る前は違法ドラッグと男女の乱れた性に焦点を当てているのだろうと思っていました。
ただ、視聴後はその考えに誤りがあり、この物語に心に突き刺さるようなメッセージがあることに気付きました。今回は『ラブ&ドラッグ』だからこそ描ける恋愛劇について、ご紹介させて頂きます。
あらすじ
ジェイミーは女性にモテる色男ですが、職場で店長のパートナーに手を出した結果、家電量販店の仕事をクビになってしまいます。
その後、就職活動の末に医薬品大手のファイザー製薬で営業マンの職に就きました。
得意の話術で医師に営業をかけるジェイミーも、他社の営業マンの存在もあり、なかなか結果を出すことができませんでした。
そんな時、彼は若年性パーキンソン病を患う女性、マギーと出会います。彼は下心からマギーと肉体関係を持ちました。やがて新薬であるバイアグラの扱い始めた彼はトップセールスマンとなっていきますが、マギーに対する気持ちには変化が生じていきます。
予告動画
エピソードに対する考察
■ライバル会社の薬品を処分するジェイミー
ジェイミーはファイザー社に所属し、自社の抗うつ薬「ゾロフト」を病院で取り扱って貰うために営業活動をしています。ただ、障害としては競合他社のイーライリリー社の抗うつ剤「プロザック」があり、既に導入されているため「ゾロフト」のサンプルの利用も期待することができません。
そこで、ジェイミーは「プロザック」を全て盗み出し、処分を繰り返します。そうすれば、自社の「ゾロフト」が利用されるチャンスがあるためです。
繰り返し処分された「プロザック」はホームレスが回収し、お金に換えて、身なりが最後は良くなります。このシーンは医薬品がいかに高額か分かりやすく表現しています。
■マギーの過去とジェイミーの本心
病を患うマギーは過去の経験から遊び相手に本気になれば、自身が傷付くことを理解しており、ジェイミーに体は許しても、心は許さない姿勢を取りました。
それに対し、ジェイミーは無理して軽いノリを振る舞い、行為に望みましたがデリケートな彼の性器は機能しませんでした。
このシーンは彼がプレイボーイながらも、内心は情に深く彼女に感情移入している二面性を現しています。
■パーキンソン病の妻を持つ男性の発言
ジェイミーはパーキンソン病の妻を支える男性と出会い、彼にアドバイスを求めます。それに対して1973年から1996年までステージ4の妻を支える男性は以下のように発言します。
「荷物をまとめてここを去り、健康な女を探すことだ。」
「妻を愛している、心から。でも二度と御免だ。」
「敢えて教えよう、この病気は君が愛する彼女の全てを奪う。」
「体、笑顔、心。」
「いずれ筋肉も動かなくなる。」
「そう、服も自分で着れなくなるんだ。」
「お楽しみの始まりさ。」
「下の世話に、顔面硬直、痴呆。」
「残酷過ぎて気が滅入るよ。」
この発言を終えて、言い過ぎたと感じた男性はジェイミーに謝罪をして去るのでした。
このシーンは愛だけでは乗り越えられない、パーキンソン病の現実をストレートに表現しています。
そして、ジェイミーはマギーのパーキンソン病を楽観視していたことに気付き、先進的な治療方法を探し回るのでした。
作品の小話
■1998年バイアグラの登場
バイアグラは、英ファイザー研究所で高血圧や狭心症などの心臓疾患の治療薬として開発されました。開発中の臨床試験の一環として、バイアグラが性的機能に関する副作用を持つことが偶然発見されたのです。
当時はED(勃起不全)に治療薬はなく、勃起不全の話題はタブーとされていました。
そのような時代背景もあり、心理的重圧から勃起不全を起こした際の彼のセリフに繋がっていきます。
■原作について
映画『ラブ&ドラック』の原作は、ジェイミー・レイディ氏のノンフィクション書籍『涙と笑いの奮闘記』になります。
この書籍は、著者が製薬会社ファイザーでバイアグラを売り込んだ経験を描いたもので、主に医師や競合他社との熾烈な駆け引きが中心になります。
映画では、これに加えて愛情とパーキンソン病というテーマを盛り込み、主人公が患者であるマギーとの恋愛や病気への目線を大切にして成長していく姿が描かれています。
まとめ
『ラブ&ドラック』は美男美女である、ジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイのセクシーなシーンが話題になりやすい作品ですが、視聴者にそれだけでは止まらない、強い印象を残す恋愛映画でもあります。
前半は軽い付き合いや肉体的な関係が多く描かれていますが、後半はジェイミーの本気の想いが表れ、マギーの病気とともに生きていくことの重みが強調されます。
病気に苦しみ、ジェイミーに言いたくないことを伝え、泣き出してしまうマギーを抱きしめたくなったのは、私だけではない筈です。
ただのハッピーエンドでは満足できない、恋愛映画好きにはお勧めできる作品になります。
ご愛読いただきありがとうございました。
ハンター田中